認知症

【認知症】についてQ&Aで説明したいと思います。

Q1.認知症ってどんな病気ですか?
Q2.どのような症状が出ますか?
Q3.認知症の診断は?
Q4.認知症の原因は?
Q5.認知症は治療できますか?
Q6.介護はどうすればいいですか?

Q1.認知症ってどんな病気ですか?

病気や怪我などで「脳が傷ついたために、記憶や判断力などが低下し日常生活や社会生活に支障が出ている状態」を「認知症」(医学用語では痴呆)といいます。認知症は症状や状態を表す言葉であり、病名ではありません。脳が、どのような原因で、どこが傷ついたかによって、認知症の症状や経過は変わってきます。原因によっては、治療可能な認知症もあります。認知症が疑われる場合には、必ず専門医を受診しましょう。

Q2.どのような症状が出ますか?

認知症の症状は、中心となる症状とそれに伴って起こる周辺の症状に分けられます。中心となる症状には、『最近のことを忘れてしまう。』などの記憶障害、『今日がいつなのか、ここがどこかがわからない。』などの見当識障害、『安全危険の判断ができない。』などの判断力の低下があります。

周辺の症状としては、徘徊、暴言暴力、介護への抵抗、不潔行為、過食・異食、もの集めなどの行動の異常や抑うつ、不安、不眠、幻覚、妄想などの精神症状があります。

中心となる症状は、必ず見られますが、周辺の症状は人によってさまざまで、適切な薬物療法や対応法によって改善させることもできます。

Q3.認知症の診断は?

認知症が疑われる場合には、次の3つのポイントを確認することが大切です。

  • 認知症かどうか?:認知症と間違えやすい病気もあります
  • 治療可能な認知機能低下ではないか?:治療可能な認知症を見落とさない
  • 認知症がどの程度進んでいるか?:適切な治療法・対応法を見つけるために必要です

認知症かどうか

ご本人やご家族のお話や簡単な記憶や知能の検査の結果から認知症かどうかを判断します。特に、日常生活の様子が大切です。あらかじめ気がついたことを記入していただくことも大切です。チェックリストも参考にしてください。

認知症で、最初に見られる症状は、物忘れです。年齢を重ねると、誰でも物忘れをしやすくなりますが、認知症の場合には、よく知っている人の名前を忘れる、自分が忘れたことに気づかない、体験したことそのものを忘れてしまうなどの違いがあります。たとえば、加齢による物忘れでは、『朝食で何を食べたのか』をど忘れしますが、認知症では『朝食を食べたこと』そのものを忘れてしまい、『食べていない』と言い張ったりします。

認知症と間違えやすいほかの病気をみのがさないことも大切です。たとえば、うつ病や薬物の副作用や急性の脳障害で起こるせん妄などがあります。これらは、適切な治療をすれば改善します。うつ病では、憂鬱な気分や物悲しさが特徴ですが、初期の認知症でも気分の落ち込みが見られることがあります。専門医療機関を受診して、正しい診断を受けることが適切な治療につながります。

治療可能な認知症?

認知症であると診断されたら、神経学的診察、血液検査、CTやMRII検査などにより認知症の原因を調べます。ここでは、治療可能な認知症を確実に診断することが大切です。

治療可能な認知症のリストです

  • 慢性硬膜下血腫
  • 正常圧水頭症
  • ビタミン欠乏症(B12 、葉酸など)
  • 甲状腺機能低下症
  • その他(梅毒、脳腫瘍 など))

認知症がどの程度進んでいるか

認知症の原因がわかれば、これからどんどん進行していくのか、あまり変わらないのかの見通しを立てることができます。現在、記憶や判断力はどの程度保たれているのか、徘徊などの問題行動はどの程度あるのか、日常生活能力はどの程度あるのかを確認することによって、適切な治療法や介護の方法、利用すべきサービスを選択することが大切です。

Q4.認知症の原因は?

脳の病気や怪我はすべて認知症の原因となります。中でも多いのは、アルツハイマー病です。アルツハイマー病は、大脳の神経細胞がだんだんと傷つき死んでしまう(変性といいます)病気です。原因はまだ研究段階ですが、はっきりとはわかりません。脳の特徴的な萎縮(脳のやせ)がみられます。特に海馬(記憶に関係がある脳の領域)の萎縮がみられます。

Q5.認知症は治療できますか?

治療可能な認知症は、原因疾患の治療により認知症を改善させることができます。この場合にも、病気が進行し脳細胞が多く死んでしまった場合には、元の状態に戻ることは困難になります。早期に診断し治療することが大切です。その他の認知症は、残念ながら現在の医療では認知症そのものを治すことはできません。残っている機能を最大限に生かし、機能をできるだけ長く保っていくことが目標となります。

認知症の中で最も多い、アルツハイマー病の場合には、病気の経過とともに症状は徐々に進行していきます。病気の初期には病気の進行を遅らせることに効果がある薬があります。また、抑うつや不安、幻覚などの精神症状や徘徊、攻撃的態度などの行動異常は、向精神薬などの薬で症状を軽減することができます。症状にあわせて、上手に薬を使うことが必要です。

認知症が進行したため、仕事をやめる、家事をしなくなる、外出しなくなるなどの生活の変化が認知機能をさらに低下させる結果となります。環境を整えて、できる限り今までの生活に近く暮らしていくこと、適度に体を動かしていくことが病気の進行を抑え、機能を維持していくことにつながります。専門施設では、回想法(昔を振り返る) 、音楽療法、絵画療法などがリハビリテーションとして取り入れられています。脳血管障害による認知症では、脳血流を改善させたり、原因となる生活習慣病を治療することで、脳卒中の再発を抑えることが大切です。

Q6.介護はどうすればいいですか?

認知症のかたにとって、よい介護を受けることが、治療やリハビリ以上に大切です。
介護の基本は、
認知症についてよく知る:認知症の症状の起こり方、経過、困ったときの対応の方法などを知っておられると、不安なく上手く対応ができるようになります。適切な対応をすることによって、さまざまな問題行動を減らすことにつながります。
本人のことをよく知る:認知症に良いとさまざまな訓練法や対応法が取り入れられています。しかし、人はみな人生経験も趣味や興味も異なります。ある方には良いことも、他の方には逆効果のこともあります。ご本人の気持ちや関心を推し量りながら、対応の仕方を考えていくことが大切です。
介護する側も無理をしない:認知症の方の介護は、24時間気を抜くことができません。介護する方も仕事をやめたり、趣味の時間を持てなくなったりと、生活範囲が狭くなり、精神的にも追い詰められがちです。介護保険サービスなどさまざまな支援を利用したり、ご家族やご近所、友人などの援助を受けることで、ご自分ひとりで抱え込まないことが大切です。介護をする方が抑うつ状態になることも多くあります。眠れない、疲れが取れない、気分が晴れないなどと感じることがあれば、専門医療機関に相談しましょう。決して、無理を重ねてはいけません。ご自分を大切にすることが、ご本人のよりよい介護につながります。

クリニックからのメッセージ

高齢者社会の到来により、認知症の患者さんは今後も増えていくと予測されます。認知症はどうにもできない病気ではないのです。若いときから生活習慣に気をつけることが、認知症の予防につながりますし、年齢が重なってからも、また認知症になってからも、脳を使い続けることによって、脳の働きを低下させないようにすることはできるのです。今流行の脳を鍛えるトレーニングもよいでしょう。しかし、毎日の生活を楽しく充実して生きること、多くの人との会話を持ち続けることが大切だと思います。