パーキンソン病・治療

ここでは、【治療のポイント】と【リハビリテーションのポイント】について説明します。

【治療のポイント】

パーキンソン病の治療法は、「くすり(薬物療法)」と「くすり以外の治療法(非薬物療法)」の二つの方法があります。どちらも大切であることは言うまでもありません。

非薬物療法について

従来から、パーキンソン病には有効なくすりがあることから、薬物療法ばかりが強調されてきましたが、実は非薬物用法がとても大切であることがわかってきました。ここでは3つのポイントをお伝えしたいと思います。

  • 病気に対する理解を深める
  • 病初期からのリハビリが大切
  • サポートを利用する

病気に対する理解を深める

まず、病気について説明を受け、患者さん自身とご家族(ご本人だけでなくご家族も)がパーキンソン病の診断について納得することが大切です。一方、医師も十分な説明を行なうことが大切です。患者さんが医師の説明に満足を感じることが、その後の治療をスムースにします。また、患者さんは医師に対して「思っていること(気持ち)」を伝え、わからないことは質問して下さい。もちろん、専門家でない患者さんやご家族が「パーキンソン病を理解する」ことは簡単ではありません。しかし、医師と患者間の双方向性のコミュニケーションを通じて信頼を築いていくことがパーキンソン病治療で最も大切なことなのです。パーキンソン病と上手につきあっていくために、医師がそれを手助け出来るようにするために、繰り返し説明を受けて「自分の状態や気持ち、考え」を述べて下さい。

病初期からのリハビリテーションが大切

日常生活での活動性の低下を防ぎ、筋力や身体の柔軟性を保つためにも、運動を行なうことが大切です。特に足腰が弱らないようにするために「歩く」ことが大切です。
 また、「身体を動かしていれば脳も元気になる」こともわかってきました。運動をすることで、気分が前向きになり身体も心も元気になります。(動物実験では、運動をしているとパーキンソン病になりにくい可能性が示唆されています)。

サポートを利用する

パーキンソン病の患者さんに対する公的支援サービスを利用して日常生活の負担を減らし、生活の内容改善をはかることができます。介護保険、特定疾患の申請、身体障害者手帳交付申請などを有効に利用することが大切です。
 また、患者の会などで他の患者さんや介護者と交流をはかることも有益です。情報交換だけでなく、悩みを共有するほかの患者さんを知ることで孤立感から開放され、連帯感もうまれることもあるでしょう。「パーキンソン病友の会」とその支部が地域で活動されていますので、参加をされてみてはいかがでしょうか。

薬物療法について

パーキンソン病の薬物療法に関しては、日本神経学会が作成した「パーキンソン病治療ガイドライン」があり、これに概ね準拠した治療が展開されることが多いです。

パーキンソン病治療ガイドライン
http://www.neurology-jp.org/guideline/parkinson/

ガイドラインは、あくまで一つの目安であり、治療方針やどの薬剤を選択するのが妥当か?についての参考意見(提案)であることも知っておかねばなりません。実際は、患者さん個人に合わせて、どのように運用するかが大切です。刑事ものの映画で「事件は会議室の中で起こっているのではない。現場で起こっているのだ」と主人公が叫ぶ場面がありました(ちょっと古いですか?)。このガイドラインの運用についても、同様なことが言えるかも知れません。

実際の個々の患者さんにおいては、年齢、運動機能の状態、認知症の合併の有無、生活環境、社会生活の状況、これまでの治療状況、それに患者さんの意向、希望や気持ち、考え方や性格、さらには経済的状況(パーキンソン病のくすりは高価です)など、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。ガイドラインを意識しつつ、個々の患者さんにとってのベストを考えて行く、これがパーキンソン病治療だと思います。この点で、ガイドラインは最良の「たたき台」とも言えるでしょう。

では、個々の患者さんにとってのベストの治療とはいったい何でしょうか?これは医師からの「ガイドライン」一辺倒の一方通行的方針で決定できるものではありません。患者さん自身が、病状の説明を受け、さらに自分の考えや気持ちを伝えて行くことで達成され得るものと考えます。

要注意(悪性症候群)

パーキンソン病の薬を飲み始めたら、絶対に 自分の判断で薬を中止してはいけません。パーキンソン病のくすり(特にL-DOPA製剤:メネシット、マドパー、ECドパールなど)を急に中止すると、悪性症候群になる可能性があるからです。悪性症候群は、読んで字のごとく、きわめて悪性な病状です。急に、発熱して、発汗、意識障害、筋緊張亢進、頻脈などの症状が出現し、生命に危険な状態となりえます。パーキンソン病の薬の調節は、医師と相談してから行なうようにして下さい!

 

【リハビリテーションのポイント】

パーキンソン病のリハビリテーションは、「病気の進行度に合わせて、そのときにできることをしていくこと」が大切です。医師や看護師、理学療法士などと相談し、ご自分に合ったリハビリメニューを作りましょう。

リハビリテーションというと、病院や施設での訓練と考えがちです。しかし、散歩や自宅での体操、スポーツや趣味の活動、家事、友人との会話などもとても効果的なリハビリテーションです。病気になったから、体が不自由だからできなくなったと思わないで、ちょっとした工夫をして無理せずできることからはじめてみましょう。ご家族やお友達など、グループですると長続きします。

症状が進んで日常生活に支障が出てきた場合には、手すりをつける、段差をなくす、すくいやすい食器にしたり、飲み込みやすい調理の仕方をするなどの工夫をして生活環境を整えることも大切です。生活上の困難を減らして、『できることは自分でする』ことが、リハビリテーションになります。パーキンソン病の患者さんは、薬の効いている時と効いていない時では体の動きに大きな差があります。体の動きのよいときにいろいろな活動をすることが大切です。ご家族は、様子を見守り、必要なときには手を貸してあげてください。

クリニックからのメッセージ

パーキンソン病は残念ながら病気そのものを治療する方法はありません。適切なくすりを適切な量だけ服用して「非薬物療法」を効果的に行いながら、パーキンソン病と上手につきあっていくことが大切です。